本のムシはやがて蝶になる

感性を磨き続けたいアラフィフ主婦の読書記録。好きなジャンルはアート、音楽、メンタル、生き方など。ちょっぴり繊細なHSP気質。

【読書記録】『仕事にしばられない生き方』 ヤマザキマリ 著

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著者のヤマザキマリさんは漫画家で、
映画にもなった『テルマエロマエ』の作者です。

 

17歳で絵を学ぶためにイタリアへ留学し
イタリア、シリア、ポルトガルアメリカ、日本と
生活習慣も宗教も違う国で暮らす。

 

仕事はチリ紙交換、絵描き、大学教師、
日伊協会事務員、旅番組でのリポーターなど
様々な職業を経験され、
読む前に想像していたのよりも
ずっと波瀾万丈な人生を経験されていて、
そこから語られる哲学に共感しました。

 

海外で借金返済のために仕事を掛け持ちしたり、
仕事で活躍すれば上司に妬まれたりと
トラブルがあるたびに働き方について考え
働き方を変えてきた著者が
国際的な広い視野で捉えた
自由に生きるための仕事やお金に対する
向き合い方を語る
奥の深い内容でした。


いろいろな経験を全て糧にして
仕事にしてしまうエネルギッシュさは凄い。
その中で好きな仕事ならば
どこまで頑張るべきなのか?
お金にならない職業を
いつまで続けるのか?
など経験をもとに語っています。


そして、
著者が貫いてきた仕事やお金においての考え方は

『お金がすべて』ではない価値観
『お金がすべて』というパワフルな価値観に
打ちのめされないためには、
それに負けないだけの価値観を
自分の中に培わなければいけない。
一元的ではない、ものを見る目、考える力を
身につけなければいけない。
芸術も文学も映画も音楽もそのためにある。

というもの。

他人に自分を映すことでしか
自分のことを確認できないから、
自分自身に芯がない。
だから常に不安でたまらない。
この漠然とした不安がお金と結びつくと、
強迫観念のように常にお金のことを
意識しないではいられなくなる。

 

お金の毒性に支配されないためには、
不安や孤独とどうしたら仲良くしていけるかを
考えた方がいい。
生きるエネルギーを乗っ取られないためには
楽しいこと、面白いことだって
この世にはたくさんあるだから
明るい方に顔を向けてそっちを思い存分やればいい。

 

“やるだけやってダメなら、場所を変えてみる“
やれることをやったうえで、
その場所がどうしても自分に合わないと
思うんだったら
思い切って場所を移ればいい。
『なんか違うな』と思ったらパッと離れたっていい。

 


また、著者がアメリカの競争社会を経験して
感じたことを語る部分を
読んで怖くなった。

 

社会に利益をもたらすエリートと
そうじゃない人の生産性のあるなしで
人間が分けられる。
そしてこの考え方の恐ろしいところは
『あたかも社会というものは
そもそもそんな風にできている』と
私達に思い込まそうとするところ。

 

弱肉強食の現実を生き延びた者だけが
幸せになる権利がある。
だからそれは一体何のためになのかも
わからなくても働き続けなきゃいけない。
そんな生き方の先に幸せがあるなんて
とうてい思えません。

 

『生産性のない人間には価値がない』
という主張をする人達は
自分たちだけは勝ち抜くことができると
どうして信じられるのでしょうか。

 

本人の意志とか頑張りではどうにもならないこと
だってあるし、
そういうのも含めたのが“生きていく“
ということなんだと思うんだけど。


世界の歴史をひもといていくと欲望や孤独が荒れ狂い、
世の中が自分たちの都合のいい
思い通りのものでないとわかると暴走を始め、
これらが国どうしで起こると行き着く先は戦争になる。

 

そう思うと怖くなる。
でも人間には知性があるし、
考える力もあるはず。
エリートとして生きていくことも
大切かもしれないけど
いろんな世界を見て、
自分の価値観の外へ出て
自分以外の価値観を知っておくことは
世界平和にも繋がる大切なことなんですね。

 

お金に振り回されずに、
そして自分に合う仕事をしながら
生きていくのが
やっぱりいいよねと思った。